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■         2010/6/26        第37号

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 営業秘密の管理体制

 退社していく社員や在職中のアルバイトから企業秘密の漏えいが後を絶ちません。

 中小企業にとって、営業秘密が漏えいすることは死活問題です。

 最も有効な対策は、従業員に対する日頃のコンプライアンスに関する啓発・教育と言われています。

 実践するのは大変なことで、まず伝達する側が中身をきちっと理解しておくことです。

 企業内外の者による不正侵害を防止するために不正競争防止法がありますが、昨年の通常国会において同法が改正され、営業秘密の侵害に対する刑事罰の対象範囲が拡大されました。

 なお、同法による保護を受けるためには、適切な営業秘密管理が必要です。

 経済産業省では、秘密管理体制を支援するための「営業秘密管理指針」を策定していますが、法改正を受け、指針の改定案をまとめました。

◆指針改定のポイント

・処罰対象行為の明文化

 競争関係の有無にかかわらず、不当な利益を得る目的や、単に保有者に損害を与える目的等で営業秘密を開示した場合について、刑事罰を科すこととしています。

・企業実態を踏まえた合理性のある秘密管理方法の提示

 企業規模や組織形態、情報の性質等に応じた合理性のある管理手法が実施されていれば、高水準の管理体制でなくても法的保護が受けられるということを明確化しています。

・中小企業等における管理体制の導入手順例や参照ツールの提示

 主に管理体制を整備していない中小企業等を対象として、契約書のひな型や実例集、管理体制を整備するまでの具体的な手順や、どのような情報を営業秘密として管理すべきかの判断ポイントなどを示しています。

◆管理体制の再チェックが必要

 指針の改定内容については、管理体制を自己評価できるように点数表も作成されています。

・秘密保持の対象となる情報を書面などで具体的に示しているか

・情報を扱える人を役職や部署で線引きしているか

などを判断基準としており、今後、一般から意見を募集し、合格点の基準を定めるとしています。

 今回の改定を契機に、自社における営業秘密の管理体制の再チェックを行ってみてはいかがでしょうか。

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$      営業秘密を適切に管理するための指針
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営業秘密管理指針
平成15年1月30日
平成17年10月12日改訂
平成22年○月○日改訂
経済産業省

 http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/hontai0409.pdf

・本指針の構成

 本指針においては、第1章において全般的な概観を行った上で、第2章において不正競争防止法における営業秘密に関する部分について説明し、第3章において営業秘密を保護するための管理の在り方について述べている。

 また、本指針に基づく適切な営業秘密の管理体制の構築等に資するよう、参考資料として、「営業秘密管理チェックシート」「各種契約書等の参考例」「我が国における情報管理に関する各種ガイドライン等について」「営業秘密を適切に管理するための導入手順について〜はじめて営業秘密を管理する事業者のために〜」を作成しているので、必要に応じて参考とすることが望ましい。

・第1章

 まず、「1.背景」において、これまでの営業秘密の法的保護の段階的な整備・強化を踏まえた本指針改訂の背景事情について説明されています。

 次に、「2.営業秘密の管理の意義・ポイント」において、事業経営上の営業秘密管理の重要性やその際に考慮すべき観点等について説明されています。

・第2章 不正競争防止法上の営業秘密の保護

 まず、「1.営業秘密の定義」において、不正競争防止法による保護を受けることができる「営業秘密」の定義とともに、営業秘密として認められるために必要な三要件(@秘密管理性、A有用性、B非公知性)について説明されています。

 次に、「2.営業秘密の民事的保護」において、不正競争防止法上「不正競争」と定義されている営業秘密の不正な取得行為等の行為類型と、それに対する民事的措置(差止請求権、損害賠償請求権、信用回復措置請求権)、民事訴訟における営業秘密の保護措置(秘密保持命令、インカメラ審理、当事者尋問等の公開停止)について説明されています。

 さらに、「3.営業秘密の刑事的保護」において、営業秘密侵害罪に該当する行為類型とその留意点について説明されています。

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 「営業秘密」とは、@秘密として管理されていること、A有用な情報であること、B公然と知られていないことの三要件を満たす技術上、営業上の情報です。

・秘密管理性(秘密として管理されていること)

 秘密管理性が認められるためには、事業者が主観的に秘密として管理しているだけでは不十分であり、客観的にみて秘密として管理されていると認識できる状態にあることが必要です。

 これまでの裁判例では、

@当該情報にアクセスできる者を制限するとともに、A同情報にアクセスした者にそれが秘密であることを認識できるようにしていることが必要とされています。

・有用性(事業活動に有用な情報であること)

 有用性についても、保有者の主観によって決められるものではなく、客観的に有用である必要があります。

 有用性とは、競争優位性の源泉となる場合を含め、そもそも当該情報が事業活
動に使用されたり、又は使用されることによって費用の節約、経営効率の改善等に役立ったりするものであることを意味し(事業への活用性)、

 裁判例では、「財やサービスの生産、販売、研究開発に役立つ等事業活動にとって有用なもの」であることが必要とされています。

・非公知性

 非公知性が認められるためには、当該情報が刊行物に記載されていないなど、保有者の管理下以外では一般に入手できない状態にあることが必要です。

 具体的には、書物、学会発表等から容易に引き出せることが証明できる情報は、非公知情報とはいえません。

 他方、人数の多少にかかわらず、当該情報を知っている者に守秘義務が課されていれば、非公知情報といえます。

 さらに、同じ情報を保有している者が複数存在する場合であっても、各自が秘密にしているなどの事情で当該情報が業界で一般に知られていない場合には、非公知情報であると考えられます。

 東京地裁平成14 年2 月14 日判決

「非公知性」が認められるためには、保有者の管理下以外では一般に入手でき
ないことが必要である。「有用性」が認められるためには、その情報が客観的に有用であることが必要である。一方、企業の反社会的な行為などの公序良俗に反する内容の情報は、「有用性」が認められない。

・第3章 営業秘密を保護するための管理の在り方

 まず、「1.概要」において、営業秘密の管理の在り方について、本章において目指す管理水準の考え方を踏まえるとともに、裁判例における秘密管理性の判断の傾向を把握した上で、営業秘密管理のポイントが示されています。

 次に、「2.営業秘密の管理のために実施することが望ましい秘密管理方法」において、営業秘密の管理方法として、秘密指定・アクセス権者の指定、情報自体の物理的・技術的管理、取り扱う人の管理、更には他者(他社)情報(以下「他社情報」という。)の不正な取得・使用の防止等を含め、これらの管理をシステムとして行うための組織的管理について、秘密管理性に関する裁判例において肯定的な要素として考慮されたものを含め、それぞれ事業者一般に採用し得る具体的な管理方法の具体例を示すとともに、併せて、営業秘密の流出を可及的に防ぐこと(漏えいリスクの最小化)などを目的として、更に情報セキュリティレベルの高い管理水準を達成しようとする事業者にとって参考となる高度な管理方法等も紹介ています。

 http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/hontai0409.pdf

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$      営業秘密を適切に管理するための導入手順
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 営業秘密を適切に管理するための導入手順について

 〜はじめて営業秘密を管理する事業者のために〜

 http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/hontai0409.pdf

 指針では、「第3 章営業秘密を保護するための管理の在り方」において、事業者の重要な情報資産を営業秘密として管理するための具体的な管理方法等について説明されていますが、事業者において、実際にその保有する情報資産を実効的に秘密管理するためには、自社の情報資産の中から、秘密として管理すべき情報資産を適切に把握した上で、これを確固たる方針に基づいて適切に管理する体制を構築することが重要です。

 しかし、これまで明確な経営方針に基づいて営業秘密の管理策や情報セキュリティ対策を講じてこなかった事業者においては、そもそも秘密として管理すべき情報資産を把握していないことが多い上、そのような情報資産を営業秘密として管理するために適した具体的な手法及びその導入方法についての知識・理解が十分でないことも多いことから、「どの情報をどのように営業秘密として管理すべきか分からない」という状況から脱却することは必ずしも容易ではないと思われます。

 そこで、これから重要な情報資産を営業秘密として管理すべき体制を構築しようとする事業者にとって、参考となり得る導入手順の一例について、具体的な事例に則して紹介されています。

 営業秘密管理体制を構築するための導入手順について、

@自社の強みとなる情報資産の把握(→営業秘密として管理する情報資産の把握)

A営業秘密として管理すべき情報について、現状の管理状況及び管理水準の把握

B営業秘密及び管理ルールの指定・周知・実施

Cチェック・見直し、

という順序で実践例に則して具体的に説明されています。

 http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/hontai0409.pdf

 中小企業等の参考となる、チェックシート、各種契約書の参考例等を掲載されています。

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 では、また、次回お会いしましょう!!

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