インターネット・オークションの現状と今後
The present condition
and future of the Internet Auction
Copy Right Ken Ishiyama
1.はじめに
オークション(auction)は、「ふえていく」とか「増加」を意味するラテン語のauctioが語源である。紀元前500
年ころの新バビロニア(前598年〜前550年)で、年に一度の少女のセリ(ビッディング)がおこなわれていた。ローマ時代(BC753に伝説上のローマ建国、BC509に王政廃止、共和政樹立、AD395にローマ帝国の東西分裂、AD476に西ローマ帝国が滅亡、AD1453に東ローマ帝国が滅亡)の文献によれば、当時すでにオークションに関する言葉があった。家財の競売、戦利品や捕虜の競売などが行われていたようである。
中国では、漢の時代に僧侶が死ぬとその所有物がオークションにかけられ、シルクロードや南海交易の商人たちの大半の高額商品はオークションの対象だった。唐の時代には、死亡した僧侶の所有物はオークションで処理された。しかしその後は、実際には行われていた可能性が高いが、オークションについての資料はほとんどなく、歴史をたどるとしても次は16世紀後半までの空白がある。
ヴィクリイ(Vickrey)はオークションのルールに関する4つの形態を考察した。1)
・イングリッシュ(英国型)・オークション(English auction)
全員の前で、買手がセリを行い上方への修正のみを許すとしてつけ値を上げていく。そしてある価格の下でだれも上方へ値を修正する者がいなくなったとき、最後に残った1人にその価格で財を購入させる。
・ダッチ(オランダ型)・オークション(Dutch auction)
イングリッシュ・オークションとは反対に、十分に高い値から始めて、最初に購入を申し込んだ個人がその値で財を入手する。
・第2価格入札方式(the second-price-sealed-bid auction)あるいはクラーク=グローブス=ヴィクリィ・オークション(CGV auction)
潜在的な買手全員が他人のつけ値を知らされずに希望購入価格を記入する。そしてそれらを公開し、もっとも高いつけ値をした個人に、2番目に高い価格で購入させる。この方法はオークションが公開あるいは非公開で進行するという違いがあるとはいえ、だれがどの値で入手するかのルールは第1の方法とまったく同一である。
・第1価格(最高価格)入札方式(the first-price-sealed-bid auction)
第3の方法と違ってもっとも高い買値をつけた個人がその価格で財を購入するルールである。この方法ではオークションの進行によって参加者に情報が伝えられることがないのが普通であるので、その限りでは(2人以上が同じ価格をつける場合を無視すれば)第2の方法とどのような価格を提示するかという戦略の面ではまったく同等である。
イギリスでは、イングリッシュ方式の最初のオークションが1595年に行われ、17世紀後半には一般に行われるようになった。1745年にサミュエル・ベーカーが開催した書籍オークションは、紳士的な競売方法と書籍という魅力ある商品を全面に出して人気オークションになった。このオークションが、その後のサザビィ社とクリスティ社の原型となった。その後オークションは新たな段階を迎えて広がり、不動産から家財まで、香料から奴隷まで、ありとあらゆるものが競売にかけられ。
18世紀には貿易、商業が盛んになりインドに新たな貿易ルートが拓かれ、カリブ諸島と南北アメリカへと発展した。アメリカでは、三角貿易への奴隷オークションの組み込みが行われた。18世紀後半になるとヨーロッパでオークションが急成長した。ロンドンを拠点にクリスティ社とサザビィ社が設立され、美術品を中心に家具、宝石のオークションが行われた。両社は現在に至るまでオークションの世界をリードしている。2)
オークションをインターネットで利用できるようにしたのがインターネット・オークションである。インターネット・オークションは、簡単に売り手と買い手を結びつける場の運営であり、売り手の方は、自分が持っている商材、要らなくなったもの、お中元でもらったもの等をこの市場に登録し、一定の期間の中で買い手の方が値段を競り上げていくという仕組みである。
1995年から開始され、1998年以降、アメリカのサイトを中心に急速に成長し、世界中に広まった。24時間利用でき、ほとんどのサイトで会員登録が必要である。落札手数料が掛かるサイトも多い。売る人を選ぶ事は出来ないが高く売れたり、ちょっとした駆け引きのゲーム性があるのが特徴である。
似ているものにフリー・マーケットがあるが、これは複数の相手との交渉が出来るが、複数の購入希望のうちどの人と取り引きをしたいかの選択権があるのに対して、オークションでは交渉権や選択権はなく、入札期間が終了すると高額入札者に落札される点が異なっている。
・カウントアップ・オークションは、入札してきた経緯が公開されている一般的なオークションである。
・クローズド・オークションは、金額が見えないので誰がどのくらいの金額で入札しているかは出品者にしかわからないオークションである。どうしても落札したい場合は高い値段を付けざるを得ない。
・カウントダウン・オークションは、時間と共に品物の金額が下がっていく。入札があった時点で終了するもの。
・プライスダウン・オークション(逆オークション)は、売り手ではなく買い手メインのオークションである。買いたい品物・金額を提示し、売り手が最低限の売値を提示する。一番安く提示した売り手が落札者となる。
・シングル・オークションは、1点の商品をみんなで競り合って落札するオークションである。
・パワー・オークションは、入札された金額の最も高い方から順番に落札対象者となる。ダッチ・オークションと違いそれぞれが入札した金額を採用する。
・ダッチ・オークションは、商品が複数ある場合に上位の金額を付けた複数の落札者の中で一番安かった金額を採用する。
本稿は、これらのインターネット・オークションについて、過去の経緯を踏まえた上で、その現状と今後を考察するものである。なお、最近、経済の民有化が進むにつれて、公共部門の工事の発注やサービスの購入についてオークションが行われることが多くなったが、ここでは公共部門のオークションは対象外とする。
2.仕組み
インターネット・オークションとは、簡単に言えばインターネットを利用して行われる競り売りで、利用者の形態によって3つの種類に分けることができる。
@売り手及び買い手ともに個人で、サイト運営者は基本的に情報の仲介のみを行う形式
A売り手が法人、買い手が個人で、サイト運営者は基本的に情報の仲介のみを行う形式
B売り手が法人、買い手が個人で、売り手自身がサイトの運営を行っている形式
@はCtoC(Cosumer to
Consumer)型、ABはBtoC(Business to Consumer)型である。
出品されている商品の中から、気に入った品物を自分の指定した金額で入札することができ、あらかじめ決められた期間、入札を受け付けて、最終的にもっとも高い金額をつけたユーザーがその商品を購入できる。一般的なオークション・サイトでは、現在の最高価格が表示されており、その価格よりも高い金額であれば入札できるといった仕組みを設けている。また、オークション・サイトによっては、参加者が自分の商品を出品することもできるようになっており、新しい形のフリー・マーケットとして多くの人に利用されるようになってきた。
商品の出品者と落札者の集りがオークション・サイトで、出品者にとってはゴミに等しい物でも、落札者にとってお宝品になる。出品者は最低でも売ってもいい金額から始め、落札したいと思った人は入札し、他の人がより高く入札すると、前の入札は無効となる。最終的に出品者が決めた期限に達した時点で最高額の方が落札者となる。
オークション上の取引はここで一旦終了し、サイトから、あなたがこの商品を落札しましたという内容のメールが来る。その後に出品者からの細かい取引内容のメールが来て、自分の住所、届けて欲しい場所や郵送形式などを指定したりするメールでやりとりする。落札金額を入金完了すると、取引相手が発送をして、商品を受け取る。商品を受け取ったら、相手に、無事に届きましたという内容のメールを送り、いったん手続きは完了する。事務的には、最後に相互に評価を行い一つの取引が終了する。
価格を決めるメカニズムについては、調査的な研究と、理論的な研究が行われている。 調査的な研究としては、Charles A.WoodとRobert J. Kauffmanの「インターインターネット・オークションで最終的な価格を決める要素は何か。eBayにおけるコインの取引に関する経験的な調査」があげられる。3)
落札価格が上がる要素は4つあるという。オペレーションリサーチの手法を使って1999年から2001年の間にeBayで取引されたコインの取引7、362例を分析した。
・週末効果
週末に終了するオークションの落札価格は平日に終了するオークションの落札価格よりも平均して2%高かったことが判明した。この傾向は3年間にわたる調査で継続してみられる(1999年に2.6%、2000年に2.3%、2001年に2.2%)。この効果は市場全般に起こる現象というより、人間の特性によるものと思われる(考える時間があるときにはより高い価格でも容易に支払う傾向にあるのかもしれない)。
・画像効果
画像とともに出品してある商品は、通常の画像がない商品に比べて高く売れる傾向がある。その割合は2001年では11.3%にのぼっており、これは1999年の5.7%、2000年の6.8%に比べて大幅に上昇している。全体的にデジタルカメラなどの道具が普及している中で、消費者ができる限りの情報を求めていることを示していると思われる。
・人物評価点効果
経験を積んだ出品者は経験のない人に比べて大幅に有利である、という傾向は、大幅に増大している。2001年にはeBayで高い人物評価を得ている人には価格プレミアムが6.8%ついており、この数字は1999年の4.8%、2000年の5.3%に比べて増加傾向にある。人物評価点が時間とオークションの出品回数によって増えることから、その人物に対する評価というより、オークションの経験を示す数字であると思われる。
・オークション期間効果
長く開催されているオークションはより多くの入札を得るという傾向があるが、オークションへの参加者が増えるにつれて減少傾向にある。参加者が少なかった1999年には長く開催されているオークションの商品には5.2%のプレミアムがついたが、2001年の段階でこのプレミアムは1.7%にまで減少している。オークションへの参加者が増えるつれて、買い手がより良い取引を求めるため、開催期間が短いオークションも人々を引きつけることができるようになっていると思われる。
次に、理論的な研究としては、確率・統計論、心理学、ファイナンス理論、ゲーム理論・実験経済学などがあげられる。確率論・統計論は賭けを分析するための最も重要なツールであるが、ギャンブルに必要な確率・統計論には、ファイナンス理論に含まれている。心理学はファイナンス理論の行動ファイナンスや行動科学を取り入れた分野が含まれている。ファイナンス理論では個人の戦略的行動を、十分に取り入れて理論が構築されているとはまだいえない。認知科学、特に認知心理学は、このような賭けに対する人間行動を分析している。人数が多くなったり、ポーカーやブラックジャックの必勝法を解析したりする場合には、計算機科学の助力が必要となる。遊戯の歴史という点から民俗学や社会学から分析する方、ギャンブルのもたらす財政収入という点から応用ミクロ経済学や財政学の観点も考えられる。4)
ゲーム理論は、フォン・ノイマン(John von Neumann)が2人ゼロサムゲームの基本定理を証明したことに始まる。お互いに影響を与え合う場で自分の利益を追求する行動は、本質的に室内ゲームと同じである。現実の生活は、はったり、ちょっとしたごまかしの駆け引きや、こちらの動きを相手がどう読むかと考えることから成っている。ノイマンは完全に合理的なプレーヤーを想定して、ポーカーの研究からゲーム理論を発展させた。ポーカーは確率論だけにもとづいてプレーしたのでは勝てない。確率論は自分の手の大きさに応じて、賭け金を決めることをすすめる。しかし、ずっとそういうパターンでやっていれば、手を相手に読まれてしまう。ポーカーの駆け引きでは、はったりの使い方が重要であり、社会には個人、企業、国家などいろんなプレーヤーが存在し、それぞれの行動が影響を及ぼし合っている。5)オークションは、入札価格を戦略とする同時進行ゲームであるとも考えられる。しかし、著者が実際に試行してみた経験では、はったり、ごまかしの要素はあまりなく、むしろ必要性の方が強いファクターのように思う。
3.市場概況
CtoCオークションの市場規模は、アメリカは、2002年では1兆9、000億円、2003年では3兆円、日本は、2000年では540億円、2001年では1100億円、2002年では2、100億円、2003年では3、300億円であった。右肩上がりの成長が現在でも続いており、消費者のニーズの高まりとともに、今後もさらなる発展が十分期待できる。
アメリカでは、オークション専門サイトだけでなく、ポータルやECサイト、コミュニティ・サイト、コンテンツ・サイトなどがオークションを導入している。最近では、BLOGを利用した比較的小規模なサイトもいくつか出現している。中では、1995年に始めて創業した最大手のeBayや、1998年から参入したYahoo!、1999年から参入したAmazon.comなどが先行している。eBayの優位は、第一に、ユーザーに、オークションはeBay、というブランドが浸透している。第二に、ユーザーを引きつける最大の魅力は商品の多さにあり、サイトの集積力がきわめて強い。第三は、基本的な技術やサービスの改善などにより、先発の強みを維持している点である。
日本のサイト別取扱いでは、1999年から参入したYahoo!オークション、1999年から参入したビッダーズ、1999年から参入した楽天フリマの順となっている。4番目が2000年から参入したeBayジャパンであったが、2002年に日本市場を撤退した。eベイは、日本以外ではトップのオークション・サイトとしての地位を築いているが、日本市場では、先行のYahoo!オークションの不動の地位を崩せなかった。
出典 http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/itnavi2006/ 2004〜2006年は予測値。
Yahoo!オークションはなんでも扱い、個人間売買と企業出品による、国内最大のオークション・サイトで、幅広いジャンルを扱っており、出品数の多さは有料化後も圧倒的である。BIDDERSはは個人出品と企業出品がある。個人出品は洋服やブランドものなど、女性に人気の物の出品が多い傾向があり、企業出品ではNECやDELLなどのアウトレット品などがある。楽天フリー・マーケットクションは楽天スーパーオークションの個人間売買版で、なんでも扱う出品数日本有数の老舗サイトである。楽天市場楽天スーパーオークションは、パソコン、家電、生鮮食品、酒、バッグ、アクセサリなどを扱う。楽天自体がモール型サイトなので、様々な業者からここ独特の出品がある。
(1) オークション・サイト
現在運用されている代表的なオークション・サイトには、次のようなものがあるが、他に小規模なサイトが次々に出現している。
(2)出品数の推移(2004年8月3日18:00)
すべてのサイトについての網羅的な統計はないので、代表的なサイトの出品数の推移を掲げる。
出典: http://www.aucfan.com/category
(3)Yahoo!のカテゴリとランキング
すべてのサイトについての網羅的な統計はないので、最大手のYahoo!のカテゴリとランキングを掲げる。
Yahoo!カテゴリ (出品点数6,081,271)
出典: http://www.aucfan.com/category
Yahoo!オークション
カテゴリランキング上位5位(2003/10/29)
順位
|
カテゴリ名
|
出品数▼
(前週比)
|
取引数
(前週比)
|
取引額
(前週比)
|
出品者
(前週比)
|
落札者
(前週比)
|
平均入札
(前週比)
|
平均単価
(前週比)
|
落札率
(前週比)
|
1
|
住まい,インテリア
|
3,524,872品
-4%
|
76,229件
-7%
|
447,897,774円
-6%
|
42,291人
-8%
|
68,855人
-7%
|
7.49
+2%
|
5,875円
+1%
|
15%
-6%
|
2
|
ファッション
|
1,863,016品
-4%
|
38,305件
-7%
|
182,848,147円
-7%
|
20,312人
-7%
|
34,900人
-7%
|
7.61
+2%
|
4,773円
-
|
14% -
|
3
|
アンティーク,コレクション
|
1,532,617品
-6%
|
30,943件
-10%
|
146,221,862円
-9%
|
18,577人
-8%
|
27,671人
-9%
|
6.43
+2%
|
4,725円
+1%
|
17%
-6%
|
4
|
おもちゃ,ゲーム
|
1,183,146品
-6%
|
24,849件
-11%
|
119,936,375円
-10%
|
15,352人
-9%
|
22,561人
-9%
|
6.52
+2%
|
4,826円
+1%
|
18%
-5%
|
5
|
自動車,オートバイ
|
881,541品
-
|
10,912件
-8%
|
209,712,926円
-3%
|
7,586人
-8%
|
10,469人
-8%
|
6.99
+1%
|
19,218円
+6%
|
9%
-10%
|
|
全以上を含めた全てのカテゴリ合計
|
6,081,247品
-4%
|
115,265件
-8%
|
776,135,735円
-5%
|
64,247人
-8%
|
103,618人
-8%
|
7.06
+2%
|
6,733円
+4%
|
14%
-7%
|
|
出典 http://www.aucfan.com/catrank.cgi より一部抜粋
出品数は調査期間最終日の18:00時点での出品数、取引数は当日落札された出品数で複数個落札された出品でも個数1としてカウント、取引額は当日落札された商品の落札額、出品者は当日商品が落札されたユニークユーザ数、落札者は当日商品を落札したユニークユーザ数、平均入札は当日落札された商品の平均入札件数、平均単価は当日落札された商品の平均単価、落札率は当日の落札率である。
4.利用状況
出所:(株)イプシ・マーケティング研究所「携帯電話の利用に関する調査(II)」(2004/4月)がたいへん参考になる。 http://www.ipse-m.com/ (なお、公開アンケート調査結果は自由に活用してよいとのことある。指定の方式で出典を明記させていただいた。)
アンケート対象者はインターネット・ユーザー。有効回答者は2、714人。男性38.8%、女性57.6%で女性のほうが多い。年齢構成では「30〜34歳」が最も多く約2割、次いで「25〜29歳」18.5%、「35〜39歳」16.7%となり、25歳から39歳までの年齢層が全体の半数以上を占める。平均年齢は34.5歳。職業は、「会社員」(34.9%)、「専業主婦」(26.4%)、「パート・アルバイト」(10.7%)の順。ライフステージ別では、「独身」(37.5%)が最も多い。回答者の約6割がブロードバンド・ユーザー。
(1)インターネット・オークションの利用実態
インターネット・オークション利用経験者は回答者の約55%にのぼり、インターネット・オークションは広くネット・ユーザーに浸透している。ネット・ショッピング(77%が利用経験あり)に比べるとまだ少ないものの、回答者の半数を超えており、もはやアーリーアダプターだけが利用するものではなくなっている。
ネット・オークションの利用状況
[全体]
(複数回答)
出典 http://www.ipse-m.com/report_csmr/report_c2/report_c2_sum.htm
ネット・オークションはユーザーには購買チャネルの一つとして定着している。ユーザー数ではネット・ショッピングのほうがオークションより多いが、利用頻度ではオークションのほうが高い。ネット・ショッピングの年間購入回数が平均5.9回に対して、オークションの平均利用回数は落札(購入)が9.5回、販売では16.3回となっている。
生活のツールとして浸透している層と、「一度オークションを体験してみたい!」というライトユーザー層が混在している。年間の落札回数が「20回以上」のヘビーユーザーの割合が11.1%いる一方で、「1〜2回」の割合が29.6%おり、混在している。年間の販売回数が「20回以上」のヘビーユーザーの割合が26.9%いる一方「1〜2回」の割合は21.8%という状況である。
オークションでの購入・販売とも平均利用回数では女性が多い。入札以外の落札・出品・販売のいずれにおいても女性のほうが年平均利用回数が多い。特に「20代」「30代」の女性の、出品・販売が活発である。ショッピングの平均購入回数も女性(平均6.3回)のほうが男性(平均5.4回)より多い。
年間平均利用金額は、購入(落札)合計で約8万3千円、販売(取引成立)合計で約10万2千円。平均利用金額では男性のほうが多い。購入および販売における男女別の最高金額・最低金額・過去1年間の合計金額は、「販売の合計金額以外」は男性のほうがかなり多い。
オークション利用者はまだまだ増える見通し。回答者の8割近くが今後もオークションを利用したい(「購入のみ利用したい」、「販売のみ利用したい」、「どちらも利用したい」の合計)と回答している。
ネット・オークションの今後の利用意向
[全体・性別]
出典 http://www.ipse-m.com/report_csmr/report_c2/report_c2_sum.htm
オークション・サイトにアクセスする時間は、ユーザー平均1日42分とかなり長い。アクセス時間「0〜9分」が4分の1以上いる一方で、「1時間以上」が2割以上いるため、平均はかなり長い。男性の平均35分に対して女性46分と女性のほうがアクセス時間が長い。
(2)オークションで取り扱う商品と利用オークション・サイト
オークションで取り扱われる商品は、販売・購入とも「ファッション」がトップ。2位・3位は購入の場合は「家電・AV機器・カメラ」・「おもちゃ・ゲーム」、販売の場合は
「チケット・金券」・「本・雑誌」の順。ネット・ショッピングでは、トップが「衣類・ファッション」用品、2位「書籍」、3位「日常の食材」となり、商品ジャンルが異なる。最もよく利用するオークション・サイトのランキングは、1位Yahoo!オークション(60.88%)、2位楽天スーパーオークション(18.3%)、3位BIDDERS(6.8%)。
ユーザーの年齢別では、Yahoo!は年齢が上がるほどユーザー比率が少なくなり、逆に楽天スーパーオークションは年齢が上がるほどユーザー比率も上がる。利用オークション・サイトの登録数は1〜2が大半。利用理由は「最初に登録したオークション・サイトだから」「出品数が多いから」が5割以上である。利用オークション・サイトの登録数は4割以上が「1つ」、3割近くが「2つ」と回答。平均登録サイト数は1.8である。最もよく利用するオークション・サイトの利用理由(複数回答)は、「最初に登録したオークション・サイトだから」(52.0%)、「出品数が多いから」(51.8%)、「利用者が多いから」(33.7%)がベスト3である。
(3)オークション利用者の意識と行動
オークションを実益性や利便性などの実利目的に利用するユーザーが多数派を占める。ゲーム感覚で楽しんでいるのは少数派である。ユーザーがオークションで入札・落札するメリットとして挙げたベスト3は、欲しいものが安く買える83.9%、掘り出し物やレア物を買える51.9%、いつでも好きなときにできる43.3%である。販売するメリットとして挙げたベスト3は、家に眠っている不用中古品が処分できる82.9%、お金が得られる75.9%、いつでも好きなときにできる45.9%である。
ネット・オークションで販売するメリット(複数回答)
出典 http://www.ipse-m.com/report_csmr/report_c2/report_c2_sum.htm
オークションでの決済は、今は「銀行振込」や「郵便振替」が多いが、「ネットバンク」や「代金引換」など多様な方法を望んでいる。利用したことのある決済方法(複数回答)は「銀行振込」(71.5%)と「郵便振替」(62.0%)が多いが、望ましい方法を挙げてもらったところ、「ネットバンク」(28.1%)、「代金引換」(25.2%)、「郵便振替」(24.4%)、「銀行振込」(17.2%)と多様な方法を希望している。
オークションを利用しない理由は「不安感」からが多い。ネットではショッピング利用経験だけでオークションを利用したことがない人(N=757)は、その理由として(複数回答)「問題が発生したときの保証が心配」(52.0%)、「商品がきちんと届くか心配」(36.5%)、「商品の質が心配」(35.8%)と主に不安感を挙げている。
オークションに関する情報は主にオークション・サイトから入手。全体的には不活発だが、ヘビーユーザーほど情報発信が活発である。情報の主な入手経路は「オークション・サイト」が63.5%で最多。続いて「メールニュース」12.6%、「友人・知人」7.6%である。日頃の情報発信については全般に不活発で、2割前後のユーザーが「友人等にオークション体験についてよく話す」、「自分の薦めでオークションを始めた友人がいる」と回答した程度である。ただし、ヘビーユーザーほど、オークションのノウハウや体験を周囲に発信している。
ヘビーユーザーは、オークション利用で消費スタイルに変化の兆しがある。オークションを利用するようになって「商品の買い替えサイクルが短縮」したり、オークションで販売するようになって「副収入が増え、消費金額が増えた」という人は、回答者全体では少ないものの、年20回以上利用しているヘビーユーザーではそれぞれ4割前後おり、オークションが消費スタイルを変える兆しが見られる。
記事(http://www.ipse-m.com/report_csmr/report_c2/report_c2_sum.htm)
5.問題点
インターネット・オークションの問題点として、法律違反商品の販売、詐欺的な取引行為、売り手側のリスクなどがあげられる。当初、フリーアドレスを使った素性が分からない出品者がたくさん現れたことが影響している。しかし、現在は本人確認が義務づけられている。
(1)法律違反商品
法律に違反している商品には、盗品、猥褻図画、著作権を侵害している商品、覚せい剤、武器や爆発物などがある。オークション・サイトでは出品そのものが禁じられているが、すべての商品を厳格にチェックしているわけではない。サイトの管理者が発見次第削除しているほか、警察も監視はしているようである。
猥褻図画やコピー商品などのように、違法かどうか現物をチェックしないと判定しがたいケースが問題である。出品商品を監査機関に提出させてから出品することも考えられるが、出品コストの上昇でマーケットが成り立たなくなってしまう恐れがある。
(2)詐欺的な行為
オークション利用に際してトラブルにあった経験者は購入で約1割、販売で約2割あるという。入札や落札に際してトラブルにあったのは11.7%。内訳は「落札した商品が届かなかった」(30.7%)が最も多く、「破損した商品が送られてきた」(22.9%)、「落札したものと違う商品が送られてきた」(17.0%)の順である。結果的に4分の3以上は解決している。出品や販売に際してトラブルにあったのは18.9%である。「落札者と連絡がとれなかった」(56.3%)と「落札者にキャンセルされた」(47.0%)が販売の2大トラブルで、後者は8割近くが解決しているが、前者の解決状況は4割程度である。購入も販売もヘビーユーザーほどトラブルにあう割合が多い。6)
これらは、その後の当事者間の話し合いで、返品などの形で決着することが多いが、最初から詐欺を働くつもりで出品がなされることもある。いままで、出品者が登録制となり本人確認が義務づけられたこと、取引の度に行われる評価が累積してきたことなど、いくつかの改善が図られてきた。出品者が姿をくらますことは非常に困難になり、悪質な出品者が評価を通じて判別できるようになった。
また、エスクローサービスを行う会社もある。落札者から代金を一時的に預かり、商品の到着が確認されてから出品者に代金を振り込むサービスである。しかし、手続きが煩雑であることから、エスクローの利用を許諾している出品者はあまり多くない。
さらに、各オークションでは参加者に対して無料で一種の保険制度を用意している。たとえば、Yahoo!オークションの場合は、詐欺にあった代金の80%が50万円を上限に補償され、ビッダーズの場合は、見舞金として代金の全額が10万円を上限に補償される制度になっている。
(3)売り手側のリスク
代金先払いというオークションの一般的な商慣習の下では入金を確認してから商品を送付すればよいが、商品の不着、商品の瑕疵・破損、安易な入札などのリスクがある。宅配便やゆうパックの場合は受け取りが確認できるが、定形外普通郵便やメール便の場合は到着が確認できないため、瑕疵や破損があった場合、返品に応じるのかどうか、返品する場合の返送料はどちらが負担するのか、などの問題がある。また、出品者から連絡をしても音さたがなかったり、キャンセルしてほしい、と言ってくる落札者は意外に多いようである。7)
(4)トラブルと法令の整備
平成14年11月20日に、古物営業法の一部を改正する法律が国会で成立した。この改正法は公布の日から1年以内に施行されることになっている。今回の改正は、いわゆるインターネット・オークションに人気が集中し利用者や取引高が急激に増加する一方で、取引の仕組みを悪用した盗品売買が増加する傾向にあることへの対策を主な目的としている。
古物営業法の改正により、新たに「古物競りあっせん業」という新たな形態の営業が同法の規制対象となった。「古物競りあっせん業」とは、古物の売買をしようとする者のあっせんを競りの方法により行う営業をいう(古物営業法第2条第2項第3号)。インターネット・オークションがかかる古物競りあっせん業にあたることに特に問題はない。
古物競りあっせん業者には、
@都道府県公安委員会への事後的な届出義務
A盗品の疑いある出品物の警察への申告義務
B出品者の身元確認と取引記録保存についての努力義務
が課された。さらに、
Cインターネット・オークションへの出品物が盗品であると疑うに足りる相当な理由がある場合には、警察による中止命令が可能となり、中止命令に違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになった。8))
6.今後の方向
モバイルコンピューティングの利用者数、市場規模が拡大している。モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC:会員数101社)は、国内におけるモバイルコンピューティング市場形成および同市場の環境整備を推進していくための基礎資料とすることを目的に、会員である全てのキャリア(移動体通信事業者およびグループ関係にある第一種電気通信事業者)、ノート型パソコン/携帯情報端末ハードウエアメーカー、ソフトウエアメーカーおよびシステムインテグレータに対して、アンケート調査とヒアリング調査を通じて2001年度から2004年度までの需要予測と市場規模予測を実施した。9)
携帯・自動車電話(以下、携帯電話)市場は、2001年度の累計契約者数は6、610万人、2002年度が7、140万人、2003年度で7、550万人、2004年度には7、820万人になると予測される。PHS市場は、2001年度の累計契約者数は620万人、2002年度は625万人、2003年度で635万人、2004年度には640万人とゆるかやな増加ペースを辿ると思われる。これにより2004年度の移動体通信市場は8、460万人、人口普及率66.8%に達すると予測する。
市場規模の推移は、通信料金とコンテンツを合せた通信サービス分野は、2001年度には9、650億円(通信料金市場8、180億円、コンテンツ市場1、470億円)だった市場規模が、2004年度には1兆4、760億円(通信料金市場1兆1、180億円、コンテンツ市場3、580億円)になると推測する。ハードウエア分野も、モバイルコンピューティング利用者の増加を受け、2001年度で6、120億円(移動体通信端末2、980億円、情報機器3、140億円)だった市場規模が、2004年度には1兆1、380億円(移動体通信端末6、740億円、情報機器4、640億円)になると見込まれる。これにより、2004年度のモバイルコンピューティング市場規模は、2兆6、140億円にまで達すると推測される
利用者数(単位:万人)
出典 モバイルコンピューティング推進コンソーシアム10)
市場規模(単位:億円)
出典:モバイルコンピューティング推進コンソーシアム11)
現在、インターネット・オークション市場は拡大を続けているが、最近は、携帯を使ったインターネット・オークション市場の拡大が顕著である。たとえば、2004年4月1日から、株式会社ゲットウェイ、株式会社オートツールスジャパン、株式会社エヌ・ティ・ティエムイー(NTT-ME)は携帯電話専用のオークションサイト(http://auction.e-2way.com)を開始した。商品のライブ映像を配信でき、出品希望者は、PCからアクセスして出品登録を行う。オークション参加者は、携帯電話でオークションサイトにアクセスし、無料の会員登録すれば参加できる。12)
2004年7月28日から、モバイル版Yahoo!オークションで、携帯電話から出品が可能になった。携帯電話で撮影した画像をメールに添付して送信すれば、オークション商品詳細画面に掲載できる。利用者は、カテゴリ検索、キーワード検索、ウォッチリスト、入札、商品画像表示などの機能を利用できる。出品後、入札者からの質問に答えたり、オークション終了後の落札者との連絡も可能である。モバイル版から出品した商品であっても、Yahoo!オークションを利用しているすべての客から入札、落札される。モバイルとパソコンから検索されるので、落札されるチャンスが広がる。13)
モバオク(http://www.mbok.jp/)は登録は無料で、簡単な属性登録と、空メールによるアドレス確認を行うだけで、オークションへの入札・出品などができ、カメラ付携帯から画像付の出品も手軽に可能である。ポケットビッダーズ(http://www.bidders.co.jp/news/pokb/)は登録は簡単なユーザ情報を入力し、空メールによるメルアド確認を行うだけで、完全無料である。
このように、携帯・PHSを利用したインターネット・オークションは、サイト数、使用者数、市場規模において、今後も、拡大を続ける可能性が大である。携帯・PHSの利点は、常に持ち歩いていて、あまり気兼ねなく使え、いつでもどこでも相手とコミュニケーションがとれる点である。端末はより小さく、電池も持つようになり、電車の中で切れることがなくなった。これらの点を利用して、携帯・PHSの利点である、すぐその場でできる即時性に利用価値がある。
今後、携帯・PHSはさらに強力なツールに進化すると思われ、他の機器の領域を侵すことになろうが、相互に潰しあうのではなく協調することになるのが望ましい。パソコンと携帯・PHSを今後どう使い分けるかは利用者の判断と行動によるが、パソコンは今のサーバの役割、携帯・PHSは今のパソコンの役割、を担うようになる可能性がある。
携帯・PHSはどこでも気軽に使え情報のアップリンクに特に向いている。これまでのインターネット・オークションの主流は、カウントアップ・オークションであったが、これからは携帯・PHSの利点を生かして、クローズド・オークション、カウントダウン・オークション、プライスダウン・オークション(逆オークション)、シングル・オークション、パワー・オークション、ダッチ・オークションなど、いろいろな形態が試行される可能性があろう。
[参考文献一覧]
・財団法人インターネット協会監修、”インターネット白書2003”、2003.7、インプレスコミュニケーションズ、pp.235-242.
・潟ニゾン、 “ヤフー・オークション公式ガイド〈2004〉”、2004.3、ソフトバンクパブリッシィング、
・ジャムハウス、”Yahoo!オークションらくらくガイド”、 2001/12、スタジオDNA
・飯島和男、”ネットオークションに勝つ5つの法則―知っておくだけで初めてでも失敗しないプレイブックス”、2001.1、青春出版社、
[参照文献等]
1)Vickrey. W.,”Conterspeculation, Auctions, and Competitive Sealed
Tenders”,Journal of Finance, 16 (1961),pp. 8-37.
)
2)Brian Learmount,”AHiatory of Auction”, 1985,(中村勝監訳,”オークションの社会史”,1993.高科書.)
3)Charles A. Wood & Robert J. Kauffman,”What Factors Drive Final Price in Internet
Auctions? An Empirical Assessment of Coin Transactions on eBay”,2001.11.06, at
the annual convention of the Institute for Operations Research and the
Management Sciences at the Fontainebleau Hilton Resort.
(http://www.informs.org/Press/miamibeach03b.htm 2004.08.23)
4)http://www.nabenavi.net/gamble/gamble-ne07.htm 2004.08.23
5)Scott Bierman,LuisFernandez,”Game Theory with economic
applications”
,1992.11.01,Elsevier Science
Ltd.
6)http://www.ipse-m.com/report_csmr/report_c2/report_c2_sum.htm
2004.08.23
7)http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_morinaga50 2004.08.23
8)http://www.eiko.gr.jp/6topics/topics061.htm 2004.08.23
9)モバイルコンピューティング需要予測結果(2001年度−2004年度)
http://www.mcpc-jp.org/text/topicst.htm
10)単体利用とは、単独で電子メールやインターネット・アクセス、情報サービス利用、データ送受信を行う形態。複合利用とは、携帯電話/PHSとノート型パソコンや携帯情報端末などの情報機器を接続して利用する形態、あるいはワイヤレス通信機器が内蔵された情報機器を利用して通信を行う形態。テレメタリング等は、遠隔在庫管理や貨物集配管理、検針メーターなどのマシン・コミュニケーション分野や、防犯装置、ペットへの装着などの利用。通信料金は、モバイル環境におけるデータ通信の料金(ただし、基本料金と音声利用は除く)、マシン・コミュニケーション利用も含む。コンテンツは、インターネット上で音楽や動画像等のコンテンツをダウンロードする際に支払う使用料。
11)移動体通信端末とは、電子メールやブラウザ機能を搭載した携帯電話/PHS、およびデータ通信機能を搭載した通信端末。ノート型パソコンとは、A4ファイルサイズ、B5ファイルサイズ、A5ファイルサイズの携帯型パソコン。携帯情報端末とは、ハンドヘルドPC、PDA、電子メール端末機など。画像入力機器とは、デジタルカメラや、移動体通信端末と接続して画像を撮影する機器。市場規模は、移動体通信端末および情報機器の価格は量販店などの実売価格をベースとする。移動体通信端末市場規模の単年度推移は、各年度新規加入者数に各年度稼働加入者数を加味して算出。情報機器市場規模の単年度推移は、各年度新規加入者数と新規購入率に年度末加入者数と買替率を加味して算出。通信料金市場規模の単年度推移は、各年度稼働加入者数に料金単価の低減率や利用頻度上昇率を加味して算出。コンテンツ市場規模の単年度推移は、各年度稼働加入者数にコンテンツ単価や利用頻度上昇率を加味して算出。
12)http://japan.internet.com 2004.2.24
13)http://v4.gooside.com/i/auction.html 2004.07.28
|