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定年退職と雇用継続についてコーナー


定年退職と雇用継続について
 










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定年退職及び雇用継続について

1.改正高年齢者雇用安定法について

 産労綜合研究所の「2005年度モデル退職金・年金調査」では、回答のあった205社では次の通りです。

・定年制度を導入している企業は100%

・何らかの継続雇用制度のある企業は74.6%

・最高雇用年齢は65歳が50.3%

・継続雇用の対象者は「会社が必要と認めた者」が85.5%

・「これから労使協議を開始する予定である」が 56.1%

「現在、労使協議を進めている最中である」が 24.4%

「すでに労使行儀が済み、協定を締結した」が  9.8%

・もっとも多いのはフルタイム勤務のみの56.0%

・賃金は2つの公的給付を前提に決定する企業が42.1%

・賃金支払い形態は月給制が77.4%

 所定内賃金は

 平均月収26万円、年収では賞与あり401万円賞与なし316万円


公的給付との関係では、

  
==================================
 
両方とも受給しないが最多

 在職老齢年金のみ受給が次

 継続雇用給付金のみ受給が次

 両方とも受給するが最低

・賞与を支給する企業は66.0%

       賞与あり    賞与なし
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月38万円 年571万円 年570万円


月31万円 年462万円 年340万円

月23万円 年375万円 年256万円

月20万円 年299万円 年259万円


 急速な高齢化の進行等に対応し、高年齢者の安定した雇用の確保等を図るため、事業主は、(1) 定年の引上げ、(2) 継続雇用制度の導入、(3) 定年の定めの廃止、のいずれかの措置を講じなければならないこととするとともに、高年齢者等の再就職の促進に関する措置を充実するほか、定年退職者等に対する臨時的かつ短期的な就業等の機会の確保に関する措置の充実を図ることを内容とする改正高年齢者雇用安定法が平成16年6月5日に成立し、平成16年12月1日から施行(高年齢者の安定した雇用の確保等を図るため措置については平成18年4月1日から施行)されました。

3つの選択肢にはそれぞれ一長一短があり、またいったん制度化を行ったあとに制度を変更する場合は、労働条件の不利益変更につながる恐れもありますので、当初の制度導入は慎重に進める必要があります。

○法律:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律

○政令:年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令

○省令:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則及び雇用保険法施行規則の一部を改正する省令

○告示:職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集委託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容等の的確な表示等に関して適切に対処するための指針の一部を改正する件、年齢者等職業安定対策基本方針

○通達:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律の施行について、働者の募集及び採用についての理由の提示等に関する取組等について(()全国民営職業紹介事業協会会長あて通知)

2.企業等の高年齢者雇用の対応

従来、高年齢者雇用安定法では、60歳以降65歳までの雇用については、「雇用するよう努めなければならない」とういう努力規定とされていましたが、改正法では、65歳までの雇用が義務規定として定められました。当分の間60歳以上の労働者が生じない企業であっても、平成18年4月1日以降、65歳(男性の年金支給開始年齢に合わせ男女とも同一の年齢)までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講じていなければなりません。

 従来、多くの企業の就業規則に見られた「定年に達した者で会社が必要と認めた者については再雇用することがある」という、抽象的かつ恣意的の強い表記は認められないことになりました。

選択肢には、次の4つがあります。

定年延長

制度の導入がもっとも簡単で全社員に対して安定した雇用を保障することができますが、雇用を延長する社員の選択を行うことはできません。(退職金の取扱いなど、問題になることが多い。)

就業規則の見直しが必要です。

継続雇用制度

―勤務延長制度

対象者の選抜を行うことができ、一定以上の職務能力を持つ高齢者のみを雇用することができます。(選抜に漏れた社員のモチベーションが低下する可能性があります。)

労使協定の締結と就業規則の見直しが必要です。

継続雇用制度

―再雇用制度

対象者の選抜を行うことができ、一定以上の職務能力を持つ高齢者のみを雇用することができます。(処遇面で折り合いがつかず退職するリスクがあります。)

労使協定の締結と就業規則の見直しが必要です。

定年制廃止

高齢社員の意欲を引き出し優秀な高齢者の雇用を促進できますが、社員の退職時期が不定となり要員計画が立てにくくなります。(契約終了時のルールなどで問題が起こりやすい。)

就業規則の見直しが必要です。

(1)雇用契約について

期間の定めがない雇用契約では、高年齢者が希望すれば、65歳まで安定した雇用が確保される仕組みであれば、継続雇用制度を導入していると解釈されます。

定年の定めがある企業では、実際の対象者の有無にかかわらず、平成18年4月から新たな雇用確保の運用が求められています。なお、平成18年4月1日前に定年に達した者を対象としないことは改正高年齢者雇用安定法違反とはいえません。

高年齢者雇用確保措置の実施義務化の対象年齢は以下のとおりで、年金(定額部分)の支給開始年齢の引上げスケジュールにあわせ、平成25年4月1日までに段階的に引き上げていくこととしています。(この段階的な措置は、男性の年金の定額部分の支給開始年齢のスケジュールに合わせたもので、このスケジュールとおりに運用すれば、基本的には年金支給開始年齢までの空白期間は発生しないことになります。)

 ・平成18年4月1日〜平成19年3月31日 :62歳

 ・平成19年4月1日〜平成22年3月31日 :63歳

 ・平成22年4月1日〜平成25年3月31日 :64歳

 ・平成25年4月1日以降 :65歳

高年齢者雇用確保措置の実施義務化の対象年齢の段階的引上げにより、60歳定年の企業における、定年到達日の属する期間別の継続雇用制度等の雇用終了年齢は、以下のとおりとなります。

・平成18年4月1日〜平成19年3月31日60歳定年到達者 :63歳

 ・平成19年4月1日〜平成21年3月31日60歳定年到達者 :64歳

 ・平成21年4月1日以降60歳定年到達者 :65歳

1年ごとに雇用契約を更新する形態については、改正高年齢者雇用安定法の趣旨にかんがみれば、65歳(男性の年金支給開始年齢に合わせ男女とも同一の年齢)までは、高年齢者が希望すれば、原則として契約が更新されることが必要です。個々のケースにおいて、改正高年齢者雇用安定法の趣旨に合致しているか否かは、更新条件がいかなる内容であるかなど個別の事例に応じて具体的に判断されることとなります。

有期雇用契約のように、本来、年齢とは関係なく、一定の期間の経過により契約終了となるものは、別の問題であると考えられます。ただし、有期雇用契約者に関して、就業規則等に一定の年齢に達した日以後は契約の更新をしない旨の定めをしている場合は、有期雇用契約であっても反復継続して契約を更新することが前提となっていることが多いと考えられ、反復継続して契約の更新がなされているときには、期間の定めのない雇用とみなされ、定年の定めをしているものと解されることがあります。

継続雇用制度は、定年後も引き続き雇用する制度ですが、雇用管理の事務手続上等の必要性から、定年の翌日から雇用する制度となっていないことをもって、直ちに法に違反するとまではいえないと考えており、「継続雇用制度」として取り扱うことは差し支えありません。ただし、定年後相当期間をおいて再雇用する場合には、「継続雇用制度」といえない場合もあります。

改正高年齢者雇用安定法においては、事業主に定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の制度導入を義務付けているものであり、個別の労働者の65歳までの雇用義務を課すものではありません。継続雇用制度を導入していない60歳定年制の企業において、平成18年4月1日以降に定年を理由として60歳で退職させたとしても、それが直ちに無効となるものではないと考えられますが、適切な継続雇用制度の導入等がなされていない事実を把握した場合には、改正高年齢者雇用安定法違反となりますので、公共職業安定所を通じて実態を調査し、必要に応じて、助言、指導、勧告を行うこととなります。

継続雇用制度については、定年まで高年齢者が雇用されていた企業での継続雇用制度の導入を求めているものですが、子会社やグループ会社へなど、定年まで高年齢者が雇用されていた企業以外の企業であっても、両者一体として一つの企業と考えられる場合であって、65歳まで安定した雇用が確保されると認められる場合には、改正高年齢者雇用安定法第9条が求める継続雇用制度に含まれるものであると解釈できます。

清水信義氏の調査した30社の例では、

 (1) 定年の引上げ     5.9%

 (2) 継続雇用制度の導入 93.6%

 (3) 定年の定めの廃止   0.5%

でした。以下、継続雇用制度の導入を中心に検討することにします。

 継続雇用制度を導入する場合、希望者全員をその対象とすることが原則となります。

 ただし、例外として労使協定(労使協定又は労働協約)により継続雇用制度の対象となる労働者の基準を定めたときは、その基準に該当する者だけを対象とすること、つまり、希望者全員を対象としないということが認められています。

 さらに特例として、労使協定の締結に向け努力したにもかかわらず調わなかった場合には、中小企業(常時雇用する労働者の数が300人以下の企業をいいます。)は平成23331日までの5年間、大企業は平成21331日までの3年間は労使協定によらずとも 就業規則などに対象者の基準を定めることも認められています。

清水信義氏が調査した企業をグループ分けすると、次の3つのグループに分けられます。

 Aグループ: 大企業を中心としたグループで、早くから人材育成に努力して、すでに63歳定年制を採用してあと2年伸ばそうという事例や、60〜65歳まで処遇が変わらない事例もありました。

 Bグループ: 中堅企業を中心としたグループで、継続雇用制度を導入しようとして、13種類の基準が見られました。

 Cグループ: 中小零細企業を中心としたグループで、毎年該当者が出てくるわけでなく、希望者全員を対象にするものと思われます。

3.対象者の選定基準について

継続雇用制度対象者の選定基準は、原則として労使に委ねられており設定は自由ですが、労使で十分に協議して定められたものであっても、事業主が恣意的に継続雇用を排除しようとするなど本改正の趣旨や他の労働関連法規・公序良俗に反するものは認められないとされています。

障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)により、事業主は障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有し、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めることとされていることから、継続雇用制度導入に際し、障害者を優先することは適切な対応であり、健常者についての体力等に関する基準を免除したり、緩和することは差し支えありません。

<適切ではないと考えられる例>

「会社が必要と認めた者に限る」→基準がないことと等しく、これのみでは改正高年齢者雇用安定法の趣旨に反するおそれがあります。

「上司の推薦がある者に限る」→基準がないことと等しく、これのみでは改正高年齢者雇用安定法の趣旨に反するおそれがあります。

「男性(女性)に限る」→男女差別に該当する恐れがあります。(男女雇用機会均等法第8条第1項)

「組合活動に従事していない者」→不当労働行為に該当する恐れがあります。(労働組合法第7条)

 選定基準を定める場合の基準例は以下の2つの観点に留意して策定されたものが望ましいとされています。

・意欲、能力等をできる限り具体的に測るものであること(具体性)

 労働者自ら基準に適合するか否かを一定程度予見することができ、到達していない労働者に対して能力開発等を促すことができるような具体性を有するものであること。必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること(客観性)

企業や上司等の主観的な選択ではなく、基準に該当するか否かを労働者が客観的に予見可能で、該当の有無について紛争を招くことのないよう配慮されたものであること。

が望ましいとされています。

例えば、

・社内技能検定レベルAレベル

・営業経験が豊富な者(全国の営業所を3箇所以上経験)

・過去3年間の勤務評定がC以上(平均以上)の者(但し勤務評定が開示されている企業の場合)

等が考えられます。

 清水信義氏の調査では、以下の13項目が浮かび上がった。

・課長クラスからも継続雇用する協定(次長、部長を除く)例

・社内の社員に限定する(出向・転籍者を除く)例

・社外就労者を除外する例

・高度専門職者を継続雇用する(給与も維持する事例)例

・パートタイムを継続雇用する例

・評価制度を考慮する例

・健康で疾病なしを前提にする例

・一定の体力を前提にする例

・チームワークを考慮する例

・パソコン操作能力を考慮する例

・再雇用者を非組合員とする例

・経営上再雇用できる業務があることを前提とする例

・その他、希望者全員を継続雇用する例や、結婚・育児退職者を再雇用する例

 この中では、評価制度についての事例が参加者から2、3出されました。また、現場の他の従業員の協力度に重きをおくという意見もありました。

なお、厚生労働省が収集した基準例には次のようなものがある。

・「働く意思・意欲」に関する基準の例

引き続き勤務することを希望している者

定年退職後も会社で勤務に精勤する意欲がある者

本人が再雇用を希望する意思を有する者

再雇用を希望し、意欲のある者

勤労意欲に富み、引き続き勤務を希望する者

定年退職○年前の時点で、本人に再雇用の希望を確認し、気力について適当と思われる者等

・「勤務態度」に関する基準の例

過去○年間の出勤率○%以上の者

懲戒処分該当者でないこと

人事考課、昇給査定において、著しく評価が低くないこと

無断欠勤がないこと 等

・「健康」に関する基準の例

直近の健康診断の結果、業務遂行に問題がないこと

直近○カ年の定期健康診断結果を産業医が判断し、就業上、支障がないと判断されること

定年退職○年前の時点で、体力について適切と認められる者

体力的に勤務継続可能である者

勤務に支障がない健康状態にある者 等

・「能力・経験」に関する基準の例

過去○年間の賞与考課が管理職○以上、一般職○以上であること

過去○年間の平均考課が○以上であること

人事考課の平均が○以上であること

業績成績、業績考課が普通の水準以上あること

工事・保守の遂行技術を保持していること

職能資格が○級以上、職務レベル○以上

社内技能検定○級以上を取得していること

建設業務に関する資格を保持していること

技能系は○級、事務系は実務職○級相当の能力を有すること

定年時管理職であった者、又は社内資格等級○以上の者

○級土木施工管理技士等の資格を有し、現場代理人業務経験者又は設計者である者 等

・「技能伝承等その他」に関する基準の例

指導教育の技能を有するもの

定年退職後直ちに業務に従事できる者

自宅もしくは自己の用意する住居より通勤可能な者

勤続○年以上の者 等

4.労使協定について

 継続雇用制度を導入する場合、希望者全員をその対象とすることが原則となりますが、例外として労使協定(労使協定又は労働協約)により継続雇用制度の対象となる労働者の基準を定めたときは、その基準に該当する者だけを対象とすること、つまり、希望者全員を対象としないということが認められています。

(1) 労使協定の協議が整ったとき

 常時10人以上の労働者を使用する使用者が、継続雇用制度の対象者に係る基準を労使協定で定めた場合には、就業規則の絶対的必要記載事項である「退職に関する事項」に該当することとなります。このため、労働基準法第89条に定めるところにより、労使協定により基準を策定した旨を就業規則に定め、就業規則の変更を管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。(継続雇用制度の対象者に係る基準を定めた労使協定そのものは、労働基準監督署に届け出る必要はありません。)

従業員10人未満の事業所においては、就業規則が存在しないこともあるので、そのような場合には、就業規則に準ずるもの、具体的には、様式は問いませんが、就業規則のように何らかの方法で従業員に周知されているものにより、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めていただくことになります。

労使協定は、数事業所を擁する企業にあっても、協定はそれぞれの事業所ごとに締結されなければなりません。ただし、企業単位で継続雇用制度を運用しており、各事業所ごとの過半数労働組合等のすべてが内容に同意している(又は、すべてが労使協定の労側当事者として加わっている等)場合まで、企業単位で労使協定を結ぶことを排除する趣旨ではありません。

(2)協定協議が整わなかったとき

「労使協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わないとき」は、平成21年3月31日まで(常時雇用する労働者数が300人以下の企業は、平成23年3月31日まで)就業規則等において対象者に係る基準を定めることができるとされています。

「常時雇用する」とは、雇用契約の形式の如何を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている場合をいい、具体的には、期間の定めなく雇用されている場合、一定の期間を定めて雇用されている場合であってその雇用期間が反復更新されて事実上と同等と認められる場合、日々雇用される場合であって、雇用契約が日々更新されて事実上と同等と認められる場合、が挙げられます。パートタイム労働者であっても、「常時雇用される」と判断されれば、労働者数に含まれます。常時雇用する労働者が300人前後で変動している場合は、常態が300人以下であるか否かで判断されますが、できる限り「301人以上」の企業に準じて対応していただくことが望ましいと考えられます。

事業主は、まずは労働者の過半数で組織する労働組合(そのような労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者)と労使協定を結ぶため、話し合う努力をする必要があります。事業主側が労働者側に一方的に提案内容を通知しただけといったケースなどは、「努力したにもかかわらず協議が調わないとき」には該当しないと考えられ、そのような場合は、改正高年齢者雇用安定法違反となります。

対応年度

雇用義務年齢

大企業

300人以下中小企業

平成18年4月1日〜

〜平成19年3月31日

〜平成20年3月31日

〜平成21年3月31日

〜平成22年3月31日

〜平成23年3月31日

〜平成24年3月31日

〜平成25年3月31日

平成25年4月1日〜

62歳

63歳







64歳





65歳

協議が整わないときは就業規則で基準を定めること



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労使協定で定めなければならない

協議が整わないときは就業規則で基準を定めること







==============
労使協定で定めなければならない

5.継続雇用者の労働条件

事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、改正高年齢者雇用安定法違反となるものではありません。ただし、平成25年3月31日までは、その雇用する高年齢者等が定年、継続雇用制度終了による退職等により離職する場合であって、当該高年齢者等が再就職を希望するときは、事業主は、再就職援助の措置を講ずるよう努めることとされております。

 継続雇用に際しての雇用形態・労働条件の制約はありません。65歳までの雇用が確保されていれば、その形態について法律的には制限はありません。60歳で定年後、再雇用とし60歳以降の賃金等労働条件について労使双方のニーズに合わせた効率的な運用をすることは認められています。

高齢者は千差万別で、さまざまな人材を1つの人事制度にあてはめるのには限界があります。必ずしもフルタイムを望まず、短時間勤務や、フレックス勤務、在宅勤務、のれん分け、独立支援などを望む人材も少なくないと思われます。理想的には、全社単位でなく、「働き方」と「賃金」を、それぞれの人材に合わせた人事制度をオーダーメイドのように設計することが望まれます。

清水信義氏によれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で決めることができます。原則として、不利益変更は念頭に置かなくてもよく、賃金については参考になる市場賃金が出来つつあります。退職金は原則としてありませんので、支払いを行わない場合は、退職金規定において、「退職金計算における勤続年数は旧定年年齢である60歳時点の勤続年数を上限とする」といった改訂が必要になります。

賃金

←60歳定年再雇用

B高年齢者雇用継続給付

←65歳退職

A在職老齢年金

@賃金

厚生年金

基礎年金

6.導入に違反した場合

行政上の罰則については、高年齢者雇用確保措置の導入に違反した場合、罰金とか懲役とかの罰則はありません。公共職業安定所(ハローワーク)からの指導・助言を受けることになります。この指導・助言にも従わない場合は、厚生労働大臣の文書による勧告が出されます。また、情報公開法に基づく情報公開請求があった場合は、その具体的内容にもよりますが、資料が存在する場合には、企業名が公開されることもありうると考えています。

民事上の責任については、高年齢者雇用確保措置の導入に違反したことに対して、特別な事情が無い場合には、雇用確保措置が実施された場合に受取ることが出来た賃金等を従業員から損害賠償請求される可能性があります。

7.エイジズムについて

 エイジズム(agism)とは、年齢にこだわった高齢者の社会的差別のことです。一般的に文化・経済といったものは、若い世代を中心として変化していくので、取り残された老人には社会との溝ができてしまいます。

 企業、医療機関、福祉施設、交通機関などを考えても、老人は年をとっているだけで日陰へと追いやられる社会的状況があります。このエイジズムをなくすには、世代間の日常交流、老人個々の能力の活用が必要であると考えられます。

60代前半の男性の労働力率は、日本の場合、現在75%ぐらいありますが、先進国の中で比較的高いアメリカやイギリスで50%ぐらい、ドイツでは30%を切っており、フランスは16%ぐらいです。日本は先進国の中で、高齢者の就労意欲が飛び抜けて高い国のようです。

 アメリカでは、定年制は、年齢による雇用差別であるとのことから、1967年に、「雇用における年齢差別禁止法」が制定され、年齢のみならず、国籍や性別・障害の有無による差別は人権侵害であるという考え方が定着しています。フランスやドイツといったEU諸国も、年齢による雇用差別を禁止する動きになっています。

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